花研コーヒーブレイク
琥珀に秘められた古代生物のロマン
2025.08.22
こんにちは、リコペルシカムです。
お盆も明け、全国の学生の皆さんはそろそろ夏休みも終わりにさしかかっているころと思います。大田花きでは8月14-日~16日まで休市期間があり、私もお休みをいただいて実家のある関西の方に帰省しておりました。
皆さんは夏に必ずここに行く!という場所はありますか?
私は毎年夏の帰省では必ずユニバーサル・スタジオ・ジャパンに遊びに行っております。学生のころから何度も訪れているのですが、今回の訪問は、大好きなアトラクションの一つであるジュラシック・パーク・ザ・ライドの改修工事後初めてで、8月8日に映画ジュラシック・パークシリーズの最新作が公開されたこともあり、とても楽しみにしておりました。
ジュラシック・パークシリーズは、1993年公開の映画『ジュラシック・パーク』から始まっており、蚊が包有された琥珀を用い、蚊に残っていた血液からDNAを抽出し、復活させるという物語です。当時の映画の最高興行収入を記録し、注目を浴びました。
初めて映画を見たときは、本当にこんなことできるの~?そもそもこんな石あるの~?と思いましたが、調べてみると琥珀には当時の様々な生物が包有されることがあるのだそうです。
そもそも琥珀とは、植物の樹液が長い年月をかけて硬化したもの。その樹液に時折虫や植物が入り込み、そのまま硬化することで、映画に出てくるような虫入りの琥珀が出来るのだそう。このような琥珀はコレクターの方々にとても人気があり、インクルージョン(包有物)が少ないものより高値で取引されています。
中には虫だけではなく、苔やシダ類、花やその花粉が入っているものも発見されており、当時の雄大な自然を現代に生き生きと伝えてくれています。
樹脂に含まれるテルペンなどの精油に含まれていた成分が虫や植物の体に浸透し、体の組織の水分を置き換えることで細菌の繁殖を防ぎ、まるで今の今まで生きていたかのようなく美しさで保存されるそうです。
そんなに良い保存状態なら本当にDNAを抽出し、古代の植物も復活できるのでは!?と思ってしまいますが、そううまくはいかないようです。実はDNAには寿命があり、150万年でDNA配列が判読不能となり、680万年後には完全に分解されてしまうのです。琥珀は樹脂が数千年以上の時間をかけて地中深くで作られたもの。琥珀の虫や植物のDNAは残っておらず、抽出は不可能なんだそう。
映画のように琥珀から古代の生物を完全に復元することは難しいようですね・・・。
しかし、特定の条件の化石ならばDNA復元は可能かもしれません。
というのも、2020年にノースカロライナ州立大学の国際研究チームによって、7,500万年前の恐竜の軟骨の化石からDNAとタンパク質を検出することができたと発表されたのです。この研究で抽出できたのはわずかなDNAの断片タンパク質のみでしたが、他にも多くの研究者によって化石を用いた古代DNA研究は進められています。
日本でも2025年6月に京都大学の研究チームがオオサンショウウオの化石から抽出されたDNAの解読に成功しています。
このように発見されたDNAを組み合わせることで、古代の恐竜や植物に近い生物を生み出すことは不可能とはいいきれないしょう。ひょっとしたら、古代の植物が大田市場のせりにかかる日も遠くないかもしれませんね。
それではまた。
【参考文献】
『琥珀』 著:飯田孝一 発行所:株式会社亥辰舎
『こうして絶滅種復活は現実になる 古代DNA研究とジュラシック・パーク効果』(著:エリザベス・D・ジョーンズ/訳:野口正雄/株式会社原書房)
‘Evidence of proteins, chromosomes and chemical markers of DNA in exceptionally preserved dinosaur cartilage’(著:Alida M Bailleul, Wenxia Zheng, John R . Horner, Brian K. Hall, Casey M. Holliday, Mary H. Schweitzer mountain, 掲載誌:National Science Review, Volume 7, Issue 4, April 2020, Pages 815–822)
‘Ancient DNA integrates fossil and modern giant salamander taxonomy’(著:Masahiro Noda, Takushi Kishida, Hiroyuki Kitagawa, Ibuki Fukuyama, Kanto Nishikawa, 掲載誌:Scientific Reports)