花研コーヒーブレイク
ツバキとサザンカをめぐる植物学と文化の物語
2025.12.26
皆さんこんにちは。ゲストブロガーのウィステリアです。
突然ですが、ここでクイズです!
こちらの写真は、筆者が昨年の春に自宅の近所で撮影したものです。

地面に落ちている花びらと木になっている花は同じものですが、ツバキとサザンカのどちらでしょうか?
正解は…
サザンカです!
ツバキとサザンカをどちらも見たことがある方は、両者は見分けがつきにくいという印象がある方が多いかと思います。今回のブログは、そんなツバキとサザンカについて少し語らせていただこうと思います。
ツバキとサザンカはどちらもカメリア属の花木で、ツバキはその中でも最も耐寒性の強い種類です。筆者の実家にあるツバキも、雪の中美しく咲いていた記憶があります。
両者の最も簡単な見分け方は、花の散り方の違いです。ツバキは花が散る際、花首から丸ごとボトッと落ちるのに対して、サザンカは一枚一枚花びらが散っていきます。冒頭の写真の一枚目も、一枚ずつ花びらが落ちている様子から見分けることができますね。
そんなツバキとサザンカの学名を調べてみると、サザンカの学名は‘Camellia sasanqua’(カメリア・ササンクア)、ツバキは‘Camellia japonica’(カメリア・ジャポニカ)でした。ジャポニカという学名からも分かる通り、どちらも日本原産の植物で、江戸時代にスウェーデンの植物学者カール・フォン・リンネによって名付けられました。
ツバキは江戸時代には園芸品種が完成し、切花、特に茶花として利用され、庭木として使われていたといいます。そして江戸時代後期にはサザンカの品種も普及し、これらが西洋にも渡り世界的に普及していきました。
先ほど挙げたツバキとサザンカの学名のように、動植物の学名はラテン語による属名+種小名の2つから構成されています。この2つから各生物を特定するため、「二命名法(二名法)」と呼ばれています。この命名法を考え出したのが、植物学の父と呼ばれているリンネなのだそうです。
ツバキの命名に関しては、ドイツの医師であり植物学者でもあったエンゲルベルト・ケンペルが著した『廻国奇観』の記録を元に、リンネが学名を付けたと言われています。ケンペルは1690年から2年間、オランダ東インド会社の医師として長崎の出島に滞在し、その間に日本の多くの植物を観察・採取して記録に残しました『廻国奇観』の第5部「日本の植物」では、ケンペルが描いた28の植物を含め、約400もの植物が紹介されています。ここに記された、ヨーロッパに初めてツバキを伝えたとされる図や記述をもとに、リンネはツバキに学名を与えたのです。
ツバキは江戸時代に普及してから、絵画や彫刻作品のモチーフ、浴衣の柄や俳句の冬の季語としても登場するなど、古くから日本人の文化に根付いています。もうすぐサザンカやツバキの鮮やかで可愛らしい花姿が見られる季節になるのが私もとても楽しみです!
最後に、ツバキは茶道においても重要な花材として用いられていますが、弊社の中央通路にて展示中で、同じツバキ科の「茶花」についても少しだけご紹介したいと思います。
こちらが中央通路にて展示中の茶花を撮影したものです。
濃い緑にツヤツヤの照り葉が魅力的ですが、花が咲いた姿も可愛らしい淡い黄色が加わって素敵です。日持ちが非常に良く、葉もツバキより柔らかいのが特徴です。
まだ具体的な販売予定は決まっておりませんが、次世代の花材として私の個人的なおすすめの一つとしてご紹介させていただきました。
今回は、ちょうど一年前頃に撮影したサザンカの写真から思い立ち、ツバキとサザンカについて取り上げさせていただきました。
皆さんも今後、街中で見かけることがありましたら、ツバキなのかサザンカなのか、推察して楽しんでみてください。
それでは皆様、ごきげんよう。
[参考資料]
『自然の中の人間シリーズ 花と人間編7 花に魅せられた人々 発見と分類』大場秀章(2005) 社団法人 農山漁村文化協会











