OPERATIONAL PERFORMANCE花研コーヒーブレイク

夏と言えば「キク」なんです。

2025.07.21

はじめまして、ゲストブロガーのプロテアです。

ますます暑さも厳しくなり、まさに夏真っ盛りといった感じですね。

 

さて、皆さんは「夏」といえば何を思い浮かべるでしょうか。スイカやアイスといった身近な食べ物から、海水浴や夏祭りのイベントまで、夏は色々な風物詩がありますね。そんな中、私は夏といえば「キクの花」を思い浮かべます。というのも、私の実家はスプレーギクの栽培農家をしていて、需要が高まるお盆前の1か月間、ちょうど夏休みとも被るこのころは、子供のころから決まって農作業の手伝いをしていたからです。40度近くにもなる暑いハウスの中で苗を定植したり、収穫した花をスリーブに詰めたり。正直にいうと、子供の頃はお小遣い目当てで、いやいや手伝っていた記憶があります(笑)

 

そんな子供時代を過ごしたので、私にとって夏といえばキクの花に直結するのですが、日本ではキクはお盆や彼岸などの仏花需要以外でも多くの場面で使われています。大田花きの年間流通のうち、キク類(輪ギク、コギク、スプレーギク、ディスバッドマムを含む)は3割近く、また国産花きの中でもキクは4割を占めます。さらに輸入している花もカーネーションよりバラよりなにより、キク類が最も多いのです(2024年植物防疫所、本数)。

 

★なぜここまで日本でキクが使われるようになったのでしょうか。

キクは大変日本らしい花のように思いますが、そもそもは奈良時代に中国から渡来した植物です。日本に伝わってからのキクは、皇族や貴族といった高貴な身分の人たちを中心に格式の高い儀式などで使用されました。日本に自生していた植物ではないのに、日本の国花とされることもあるのは、少し不思議に感じますが、その理由は後鳥羽上皇がキクをこよなく愛した結果、キクのモチーフを紋章として採用したからです。庶民に広まったのは江戸時代になってから。この時期に菊合(きくあわせ)というキクの品評会が盛んになり、評価の高かったキクには相当の高値が付いたと伝わります。一攫千金を目指し、多くの人がキクの育種に熱中したこともあり、江戸時代の園芸書では確認できているだけでも251品種が生まれたのだとか。

 

このような歴史を経て、キクは日本の文化に浸透していきました。

葬儀やお仏壇用などの仏花以外にも広く使われるようになったのは昭和後期からです。これは愛知などを筆頭に各地で大きな共選産地が生まれたことや、品種改良等により、キクを周年で生産ができるようになったことで、それまで使えなかった多くの場面で使うことができるようになったためです。

このような需要があって、圧倒的に国内マーケットではキクが使われるようになったわけですが、近年では花きの消費減少に伴い、キクもマーケットが伸び悩んでいます。

 

★キクをもっと多くの人に使ってもらうためには、どんな手段が有効なのでしょうか。

個人的な考えとして、素早く効果の出る手段としては、今のキクがもつ仏花としての需要をより高めていくことだと思います。というのも、今のキクで最も需要があるのは葬式などでの仏花としての使われ方なので、既存のマーケットでさらにさまざまな品種を提案しつつ、さらに盛り上げることが重要ではないかと思います。

 

しかし、既存のマーケットだけでは若い人たちへの訴求が難しく、先細りになってしまいます。つまり、将来の需要を生み出すためにキクの花が持つ従来のイメージを改変しつつ、花の新しい使い方を考え、若い方にもキクを使う文化が根付くようにしていくことも大切だと感じています。

たとえば、最近の若い人には好きなものを「推し」として愛でたり、SNSなどで紹介したりするので、個人が好きな花を「推し花」として育てたり、紹介するようなものはどうでしょうか。キクであれば大輪やスプレーなどのザ・花というような形から一部の古典菊のようにちょっとヘンな形をしたものまで多くあるので、「推し花文化」が定着すれば多くの人が様々なキクに触れてくれるのではないか、なんて思ったりもします。

 

これからお盆などの行事があるので菊に触れる機会も増えると思いますが、その際にこの話を思い出して、昔の人の気分になって雅な気分でキクを見たり、かわいらしい花として愛でてみたり、これまでとは違った見方でキクのことを見ていただけたら嬉しく感じます。

 

それではみなさま、ごきげんよう。

 

染めのキク↓大田市場仲卸さんでの展示や販売商品

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コギクを開花させてアレンジメントに利用したもの↓(大田市場内での展示から)

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参考文献:『花の品種改良の日本史』(柴田道夫著/悠書館)

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