OPERATIONAL PERFORMANCE花研コーヒーブレイク

秋を告げる香り キンモクセイに秘められた謎と未来の可能性

2025.10.08

こんにちは。ゲストブロガーのウィステリアです。

秋分の日も過ぎ去り、ようやく秋が深まってきた頃ですが、きっと好きな方も多いであろうあの香りがそろそろ漂ってくるのではないでしょうか。

 

そう、「キンモクセイ」の香りです!

キンモクセイといえば、ここ数年でその香りをモチーフにしたディフューザー、入浴剤、ボディケア用品など多方面にわたって商品が発売され、話題を呼んでいる印象です。また、花を使用した食品も発売されています。キンモクセイの花を乾燥させてお茶にした「桂花茶」や、白ワインに漬けた「桂花陳酒」、キンモクセイの花入りのジャムなどもあります。

学名Osmanthus fragrans var. aurantiacus (“osm”はギリシャ語で「香り」、“fragrans”も同じく「香り・芳香」の意味)とされるくらい、香りが特徴とされています。

私もこの香りが大好きで、小学生の頃、仲の良かった友人宅に植えられているのを見てとても羨ましく、なんとか我が家の庭にも植えることはできないだろうかと画策していたことを思い出します。

 

しかし少し調べてみると、キンモクセイを手に入れるには園芸店で鉢を購入するか、挿し木や取り木で株を増やす方法が主流の様で、当時小学生の私には手に入れるのが難しく断念したのでした。

 

そして、先日改めてキンモクセイについて調べていると、とても驚くべき発見がありました。

なんと過去に日本に渡来したキンモクセイは雄株のみで、その1個体が増殖されていき、雌株は未だ日本には存在しないのだそうです。キンモクセイはイチョウなどと同じく雌雄異株(花粉を飛ばす雄株とそれを受粉して実をつける雌株が存在する)なのですが、たしかに日本ではキンモクセイの実というのは見たことがありません。原産国に近い中国や台湾などでは、雄株と雌株が共存するため熟れる前は緑色の、熟れると黒紫色のオリーブのような実をつけるようです。

 

しかし、雄株が渡来してからこれほど長い間雌株が導入されないというのも不思議な話だと思いますよね。一説では、原産国である中国におけるキンモクセイ「丹桂(たんけい)」(=中国での名称)と、日本におけるキンモクセイが遺伝子的に別物であるといわれます。日本のキンモクセイは、国内に自生する淡黄色の「ウスギモクセイ」から見出され、栽培化されたとの説です。もし両者が別の植物であるならば、仮に中国から「丹桂」の雌株が既に持ち込まれたとしても、日本の雄株と交配できるかどうかは分かりません。ただし、この説も実際に研究をして証明されているわけではないため、あくまで一説に過ぎません。

 

雄株しか存在しないとされている現在でも、既にキンモクセイは様々な方法で楽しまれていますが、実際に中国から丹桂の雌株を持ち込んで日本の雄株と交配させたらどうなるのでしょうか。受粉するかどうかも不明ですが、成功したらさらに香りの強い品種や香りがより長持ちする品種、花持ちが良い品種など新たな特徴を持った品種が生まれるかもしれません。そしてそれを利用して新たな商品が生み出されるかもしれません。まだ何も明かされていないものだからこそ、新たな可能性を想像するのが楽しいですね。

 

今回キンモクセイについて調べてみて分かったことは、これだけ一般的な花であるにも関わらず、未だ植物の専門家の間でも研究をする人が少なく、謎が多いということです。しかしこれは言い換えてみれば、生物学的視点からも市場的価値の視点からも新たな可能性を秘めているということです。

 

キンモクセイは幼い頃から身の回りにある身近な植物という印象であったため、未だ解明されていない点が多いというのは意外でした。もしかすると、キンモクセイのように新たな可能性を秘めた植物がまだ身の回りにあるかもしれません。今後、研究が進められていく日を楽しみにしていきたいと思います。

flower_kinmokusei

それではみなさま、ごきげんよう。

 

 

【参考資料】

・白澤照司(1997).『花図鑑 樹木』.株式会社星雲社.

・八尋州東編(1997).『植物の世界』第二巻.朝日新聞社.p201~202.

 

・・・フラワービジネスノート2026はこちら・・・

フラワービジネスノートによると、キンモクセイは10月30日「香り記念日」の“今日の花”になっていました。

月間カレンダーは2025年10月から始まっていますので、即日ご利用いただけます。

2025

pagetop