花研コーヒーブレイク
羊が支えるサステナブルな花き生産
2025.07.29
花研の一研究員です。
花き生産というと、「人の手による積み重ね」と考えがちですが、ところ変わればそうとも限らないようです。
フローラルデイリーに掲載された記事によると、コスタリカの葉物生産の現場では、なんと羊ちゃんが除草の担い手として活躍しているのだとか。
日本でも、ヤギを使った除草の取り組みはありますが、この記事で紹介された羊ちゃんの農作業は除草にとどまりません。加工場から出る葉の残渣を食べ、さらにその糞尿は肥料として再利用されるのだそうです。まさに循環型のエコロジカルな仕組みが実現されています。そしてこの取り組みは、国際的な認証も取得しているとのこと。
ここまでくると、もはや「農業」ではなく“生態系による生産”とも呼べるのではないでしょうか。もちろん、葉物という作物の特性がこのシステムを可能にしている面もあるでしょうが、こうした発想と実行力には敬意を表したいものです。
この話を聞いて、ある書籍を思い出しました。作家・石川英輔さんによる『大江戸えころじー事情』です。この本は、江戸時代の暮らしをライフサイクルアセスメント的視点から描いた一冊で、当時のエネルギー源は主に植物由来、つまり太陽光を元にした再生可能な資源だったことが紹介されています。
たとえば「おにぎり」。昔は竹の皮で包まれていました。タケノコを採る際に出る竹の皮をとっておき、抗菌性もあるその素材を活用。使い終われば自然に還る。使わなくても自然に還るものですし、環境負荷は限りなくゼロに近かったのです。
また、江戸時代は日本の人口が増加していたにもかかわらず、CO₂の排出など環境負荷とのバランスが取れていたとも言われます。ただし、移動手段は徒歩が中心で、現代のような利便性はありません。飛行機や電気自動車など、現代の移動技術はすでに不可逆的なもの。私たちは江戸時代には戻れません。だからこそ、CO₂やプラスチック排出をできるだけ減らし、環境負荷を抑える工夫と努力がますます重要になってきます。
花き業界でも、持続可能な取り組みが少しずつ広がっています。業界の一員として、また社会の一員として、私たちもできることから一歩ずつ。具体的なアクションをもって、環境への責任を果たしていきたいものです。
それではみなさま、ごきげんよう。