OPERATIONAL PERFORMANCE花研コーヒーブレイク

花デザインのポアンティリスム

2025.07.15

こんにちは。みんなの花研ひろばです。

 

もうここ10年以上になりますが昨今の花デザイントレンドのひとつに、点や細かなパーツで構成されたやわらかで繊細なスタイルがあります。それに加え、さらにここ2‐3年は淡いくすみ系のニュアンスカラーの多用が挙げられます。存在感のあるメインの花をドカンとわかりやすく据えるのではなく(もちろんそうしたデザインもありますが)、主役と脇役の境目が曖昧で雰囲気を楽しむような構成がトレンドの一つとなっています。音楽でいえばアンビエントミュージックにも喩えられるな~と思ったこともあります。

 

つまり、強い色彩や存在感で大きな面を埋めるのではなく、小輪でどのような色とも親和性の高いニュアンスカラーのアイテム(花でも葉物でも)の、点や小さな要素を丁寧に重ね合わせて、柔らかな雰囲気をつくる。そのような潮流が暫く続いているように感じられます。

このスタイルは、どこか印象派の絵画にも通じるものがあると感じています。印象派について専門的に学んだわけではないので、“印象派っぽい雰囲気だなー”と感じる程度のものです。中でも、ポアンティリスム(pointllism; 点描主義)と呼ばれる技法(面や線を使わず、小さな点の集合によって色彩や光を表現する手法)は、まさに現在の花のデザインに重なるイメージです。

小輪の花を多用し、主花と添え花の境界を曖昧にする(いやむしろその役割分担はないくらいにする)ことで、花材一本一本が目立ちすぎず、全体の印象で美しさを伝える。まさに“花き業界の印象派”とも言えるデザインです。

 

また、淡いニュアンスカラーを基調としながら、時折補色となる濃い色を挿し色として入れるのも印象派的な要素かもしれません。補色効果とは、反対の色を隣に置くことでお互いを引き立て合い、色が本来以上に輝いて見える視覚的現象です。淡いトーンにほんの少し濃い色を添えることで、全体の彩度が上がり、奥行きや高級感が生まれます。まるで光が差し込んだかのような立体感が加わるのです。

 

さらに、そのようなデザインを遠くから見ると、何色ともつかぬニュアンスが溶け合い、まるで光に吸い寄せられる虫のように、アタクシ自身の歩みもその作品に引き寄せられていきます。それが今、花の世界で生まれている“印象”の力なのかもしれません。

 

 

さて、最後に花に関するテレビ番組のお知らせです。

NHK総合の番組『サンクスonデリバリー』、7月16日(水)夜7:57~の放送は「コロンビアの花農家に“ありがとう”」。

詳細はこちら→コロンビアの花農家に“ありがとう” – サンクスonデリバリー – NHK

ご紹介まで。

 

それではみなさま、ごきげんよう。

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