花研コーヒーブレイク

こんにちは。ゲストブロガーのウィステリアです。

 

突然ですが、皆さんは写真の赤い植物はなにかわかるでしょうか。

花業界に従事される皆様でしたらきっとわかると思いますが、そうでない方はなかなか見る機会は少ないかもしれません。

 

大田市場花き棟内に展示されているこちらの植物を見かけた私は、一緒に歩いていた同期の友人と「怪物みたいで食べられてしまいそう」「ゲームに出てきそうだね」などと話し、共にその奇抜な相貌に驚愕しました。

ご存じの方も多いと思いますが、こちらの奇抜な植物は「ヘリコニア」という、南米原産の熱帯植物です。大田花きには1年間で30品種ほど流通します。

ヘリコニアとは属名で、その優雅な花姿から、ギリシア語で女神が住むとされている「ヘリコン山」に由来すると言われています。

また、螺旋状に苞葉がついていく様子からギリシア語で螺旋を意味する「helix」に由来するとの説もあります。

 

実はヘリコニアがこのような奇抜な見た目であるのには、植物の生存戦略上の理由があります。自分で動くことのできない植物は、他の生物や環境要因によって花粉を運んでもらう必要があります。ヘリコニアを含むオウムバナ科の植物は、ハチドリなどによって送粉されるため、彼らをおびき寄せるような派手な見た目をしているのです。さらには、ハチドリはヘリコニアの花の形に合わせたクチバシを持ち、ヘリコニアはハチドリが蜜を吸えるような形に変化しました。

このように、ハチドリとヘリコニアは互いの生存戦略のために進化し合っているのですが、これを共進化（きょうしんか）といいます。

 

せっかくなので、他にもヘリコニアのように特徴的で面白い見た目をしている熱帯植物をいくつかご紹介したいと思います。

 

任天堂の某大人気ゲーム（どうぶつの●とかポ●●ンとか）に登場するのでご存知の方も多いかもしれませんが、世界最大の花といわれる「ラフレシア」も東南アジア原産の熱帯植物です。種によって花径が1m程になるものもあり、開花すると腐った肉のような匂いを放つのだとか。これも受精の媒介をしてくれるニクバエをおびき寄せるためです。

 

同じくインドや東南アジアが原産の熱帯植物に「ウツボカズラ」と呼ばれるものがあります。学名は「ネペンテス（Nepenthes）」、英名では「ピッチャープラント(pitcher plant)」といいます。英名の通り、葉が変形して袋状になっていて、虫を捕まえるための独特な構造を持つ食虫植物です。

この袋の中にある甘い蜜で虫をおびき寄せ、袋の中に滑り落ちたところ虫は逃げられないまま内部にたまった消化液で分解され、栄養源として吸収されます。

 

こちらがそのウツボカズラ↓

 

実際に見てみると、大きいサイズのものは先述の捕虫方法を思い起こさせるような禍々しい印象を抱きましたが、袋のサイズが2.5cm程度の小さいものは意外にも可愛らしく、インテリアの一部としてお部屋に飾ってみるのも良いのではないかと感じました。

 

 

ウツボカズラに関しては、19世紀を生きた進化論提唱者A.ウォーレスのエピソードがあります。ウォーレスはマレー半島の探検中、飲み水が無くなり、やむを得ずウツボカズラの捕虫袋に溜まった水を飲んだのだそうです。

覗き込むと消化液が見える↓

虫を分解する消化液を人間が飲んでも大丈夫なのかと心配になりますが、参考書籍によると、東南アジア現地の住民は消化不良の際にこの消化液を飲むのだそうです。（皆さんはウツボカズラを見かけても消化液の摂取は自己責任でお願いします…）

 

 

長文になってしまいましたが、熱帯植物の面白さを感じていただけましたでしょうか。冒頭でご紹介したヘリコニアは国内でも主に沖縄で栽培されており、これからの夏が開花時期です。お部屋に飾って南国風の雰囲気を楽しんでみてはいかがでしょうか。

 

皆さんの身の回りでも、不思議な見た目をした植物を見かけることがあるかもしれません。これから梅雨に入り外出が億劫な季節になりますが、そこには熱帯植物たちのような独自の理由があるのかもしれないと思うと、より外出が楽しくなりますね。

 

それではみなさま、ごきげんよう。

 

[参考書籍]

・『花の王国　第4巻 珍奇植物』荒俣宏著(1990)平凡社

・『FLORA』トニロードほか著(2005)産調出版

・『植物の世界　第１０巻』八尋州東編(1997)朝日新聞社