OPERATIONAL PERFORMANCE花研コーヒーブレイク

「買わなくてもいいよ」マーケティング

2014.05.26

 

日頃、その商品を買わない人に、いかに訴求していくか。

新しいスタイルが広まっています。

 

例えば、車の業界。

メルセデスベンツやアウディ、レクサスなど、ショールームとは別に本格的なカフェやレストラン、バーなどの飲食を提供する空間創出が相次いでいます。

その空間には、もちろん車も置いてありますが、あくまでもさりげなく。スポットライトを浴びて高いところに鎮座しているわけでなく、商品や価格の説明ボードもなく、飲食の空間にそっと佇んでいるのだそうです。

しかし、ベンツでいえばエンブレムを象ったウーピーパイや照明があったりあちこちにメルセデスブランドを随所に感じることができます。

来店客のうちベンツのヘビーユーザーはほんの2割ほどで、大半は30-40代、半分は女性という構成なんだそう。

車に全く興味のない世代にベンツを知ってもらいたいというコンセプトで作った空間は予想以上の反響なのだとか。

 

注目すべきはアウディジャパン(個人的意見ですが)。木製の長テーブルの中央に、植栽を施し、壁も緑で埋め尽くす。

森の民ゲルマンらしく、爽やかな森の中でカフェをしているイメージ。植栽の中にはアウディ車が配してある。アウディを買う予定はありませんが(買えないし)、ちょっと行ってみたくなります。車を買うつもりがなくても自由に来店できます。普通のカフェやレストランですから。

しかも、普通のウェイターさんに見えても車のことを聞くと、溢れるほどの知識で丁寧に教えてくださるのだとか。

その他フィアットでもこのような取り組みが受けていて、ミラノやスペイン、香港などほかの拠点でも同スタイルが採用される予定なのだそう。

 

三井不動産レジでンシャルでは「“買う気がない人向け”マンション見学会」なるものを企画し、マンションを買う気のない人・・・しかし、実はイラストレーターやマンガ家などクリエーターさんなど発信力のある人、影響力のある人などをモデルルームに招待している。その人たちが最新の住宅設備や優れた点をブログやイラストを通してマンションに興味のない人に対して、親しみやすく伝えてってもらうことを狙うのだとか。

 

大阪の文の里商店街では、商店街でもシャッター通りが増える中、「買わんでええから見にきてや」をキャッチに、商店街の活性化を図ります。

 

このような、買わせるつもりありません的な、“見テルダケOK”というマーケティング戦略は、いずれも「買わない人」に向けたハードルを下げる訴求方法ですね。

 

花の業界でも見習うところがあるように思います。

花を買わない人にその理由を聞くと、

「生花店に入りにくい」

「入ったら何か買わないと出てこれないような気がする」

という答えをよく聞きます。

この前ラジオで元フジテレビアナウンサーの福井謙一さんから投げられた質問に

「花1本くださいというのがとても心苦しくて、買いにくいのですが・・・」

という内容がありました。

花屋さんで花を見るだけ、1本欲しいだけという、本格的な購買意欲の一歩手前のハードルが下げられないと、なかなか今まで買われたことのない方に訴求するのは難しいように思います。

 

“ゆっくり見て帰るだけOK”の空間や機会を作ることという提案は、花の消費が減ってきた今、花のある生活空間を皆様に楽しんでいただく前段として、欠かせないのではないでしょうか。

花の空間を楽しんでもらうコーディネート。花の業界でいえば、株式会社パークコーポレーションさんの表参道の青山フラワーマーケット本店にあるカフェの併設などがそれに当たるでしょう。

あるいは、カフェを作らなくてもお金をかけずにできることもあるかもしれません。

売っているだけでは売れるようにならないということを、ほかの業界から学ぶことができます。

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