OPERATIONAL PERFORMANCE花研コーヒーブレイク

目黒のサンマならぬ、目黒のコモレビ

2026.06.18

花研の一研究員です。

都内に外出する用件があり、久しぶりに目黒川沿いを歩きました。

ワタシの勝手な印象ですが、目黒川というのはなかなか極端なところです。桜の季節ともなれば信じられないほど人が集まり、ひとたび大雨が降れば驚くほど増水する。そして真夏には、東京の暑さを象徴するかのように川面がぎらぎらと照り返す。そんな印象ばかり挙げると、目黒川に怒られてしまいそうですが、本当はとても気持ちの良い散歩道です。川沿いを歩いていると、何となく心があらわれるのですよ。今年の6月は今のところ比較的過ごしやすい日が続いています。川沿いの桜並木の下を歩いていたところ、道路に映った木漏れ日の影がふと目に入りました。

「ああ、いいなあ」

と思って、思わずスマホを取り出してパシャリ。幸い通勤時間帯は過ぎており、周囲に人はまばらでした。これが出勤時間帯だったら少々危険です。何しろ突然スマホを取り出し、地面を撮影するわけですから「この人はいったい何を見つけたのだろう」と周囲をざわつかせていたかもしれません。木漏れ日そのものは、実は毎日のように目にしているのでしょう。けれども、「ああ、いいねえ」と足を止めて思う機会は案外少ないのかもしれません。心の余裕というやつでしょうか。そういえば、「コモレビ」という言葉は、「ココロノヨロコビ」を縮めてできたのではないか——などと勝手な説を唱えたくなります。かなり強引ですね。しかし、語感だけなら案外似ている気もします。

ところで、目黒川に限りませんが、東京には江戸時代から続く水路や河川が数多くあります。そして川沿いには、今でも立派な桜並木や街路樹が残されていますが実は都内では木陰が減っています。先日の日経新聞に「減る木陰、世界と逆行」という記事が掲載されていました。日本は緑豊かな国という印象がありますが、東京では街路樹の樹冠被覆率が減少しているという研究報告もあるそうです。その論文はこちら(Tokyo’s urban tree challenge: Decline in tree canopy cover in Tokyo from 2013 to 2022)です。樹冠被覆率というのは、上から見たときに樹木の枝葉がどのくらい地面を覆っているかという指標です。同じ樹木でも、縦方向に伸びる木と、桜のように横へ大きく枝を広げる木とでは、木陰のつくり方が違います。

また、その木陰が健康にも関係するかもしれないという話もあります。街路樹の樹冠被覆率と歩行者の行動を調べた研究では、木陰が少ない場所では歩く意欲そのものが低下する可能性も示されています。その論文はこちら(Impacts of street tree canopy coverage on pedestrians’ dynamic thermal perception and walking willingness)

です。となると、木陰というのは景観だけの問題ではなく、健康や街の快適性にも関わる話なのかもしれません。

おっとおっと・・・。どこまで行くのでしょう。

今日は木漏れ日にほっこりした話を書くつもりだったのですが、論文を引っ張り出してきたあたりから、急に日よけのないノウゼンカズラのように絡み始めてしまいました。失礼しました。これから本格的な夏がやってきます。日傘も欠かせない季節になりますが、たまには木々の下を歩いて、ふと現れる木漏れ日を眺めてみてはいかがでしょうか。

案外そこに、ココロノヨロコビが隠れているかもしれません。

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