OPERATIONAL PERFORMANCE花研コーヒーブレイク

「しろがねの葉」

2023.05.16

こんにちは。みんなの花研ひろばです。

最近直木賞を受賞した千早茜さんの「しろがねの葉」という本、みなさん読まれたことはありますか。

インターネットの販売サイトにあるあらすじを引用しますと以下お通り。

(引用)

舞台は戦国時代末期のシルバーラッシュに沸く石見銀山。 天才山師・喜兵衛に拾われた少女ウメは、銀山の知識と未知の鉱脈のありかを授けられ、女だてらに坑道で働き出す。しかし徳川の支配強化により喜兵衛は生気を失い、ウメは欲望と死の影渦巻く世界にひとり投げ出されて……。
生きることの官能を描き切った新境地にして渾身の大河長篇!

(引用終了)

 

なぜ生きるのかという気持ちを登場人物たちに寄り添い考えられる面白い話でした。

この本の中では、ヘビノネゴザ(金山草)、ハナウド、ベニシダ、ツツジ、シラクの花などと、山々の植物がリアルに書かれているのが特徴です。

ではタイトルの「しろがねの葉」とは、どのような植物のことでしょうか。

 

ヘビノネゴザは、重金属を植物体内に蓄積する力があり、他の植物が生息できないような環境でも生えることができるのだそうです。本作でも「ヘビノネゴザが生えるところには銀が眠る場所」と、鉱脈を探す指標となっていました。それがタイトルの「しろがねの葉」となっているわけですね。ヘビノネゴザとはシダ植物の一種で、学名をAthyrium yokoscenseといい、wikipediaにも「亜鉛やカドミウムや鉛や銅などの重金属によって土壌が汚染されていても、耐えて生きる能力を有している」と紹介されています。ヘビノネゴザとは「蛇の寝茣蓙」で、ヘビがとぐろを巻いてとどまっていることがあることに由来するのだとか。

いまでも石見銀山にはこれらの植物が自生しています。

 

 

さて、植物の話はここまでで、今度は石の話です。この本の物語は石見銀山(世界遺産)が舞台になっていますが、同じ島根県の温泉津(ゆのつ)というところには日本遺産にもなっている石切り場があります。室町の時代から石が切り出されていた福光という有名な石切り場です。本の中で主人公が福光の石切り場を訪れる場面がありますが、実は今でも福光では石の切り出し作業が行われています。

 

小説が出版された際に温泉津に出かけまして、切り出しの現場を見学してきました。

岩山が削られ、穴が開いています。写真のようにぼこぼこしている岩肌は、昭和47年まで職人がツルハシなどを使い手彫りしていた跡です。

IMG_9793

 

岩穴の中に入ると、現在は電気も通って機械で採石されており、岩肌がほぼ平らになっている様子が伺えました。

IMG_9794

 

福光石は柔らかく、水に濡れても滑りにくいという性質があり、現在も温泉津駅の床材として使用されたり、以前は函館の五稜郭の修復や佐渡の港の修復にも使われたりしたそうです。

室町時代から岩山の中に広がっている採石の世界、脈々と受け継がれてきた歴史の跡が感じられました。

 

それでは、みなさんごきげんよう。

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