OPERATIONAL PERFORMANCE花研コーヒーブレイク

読み方がわからなくても日ごろから大変お世話になっているもの「1-MCP」

2022.07.19

こんにちは。みんなの花研ひろばです。

 

1-MCPを正式に日本語で「ワン・エムシーピー」と読むか、あるいは「イチ・エムシーピー」と読むか定かではありません。読み方を棚上げして話を続けますと、1-MCPは植物の老化ホルモンである気体エチレンの作用阻害剤です。さらに簡単に言いますと、老化ホルモンの作用を阻害する気体の薬剤です。多くの国々で利用されています。相当な昔で恐縮ですが、この物質について書かれた論文を読んでおきなさいよと研究室の教授から言われました。当時はここまで注目されるものになるとは思いませんでした。

 

ネットで検索してみますと、1-MCPの論文は1995年頃に発表されたようです。

1995年、Sisler博士らによる『Inhibition of ethylene-induced cellular senescence symptoms by 1-methylcyclopropene, a new inhibitor of ethylene action」が初出かと思います。日本でのインターネット開始が1995年頃だったようです。私の学生時代というのは1997年前後のことです。

 

1-MCPは画期的な化合物なのです。I-MCPが植物のエチレンレセプターにはまることで、エチレンがレセプターにはまることを妨害してくれます。エチレンというのはレセプターという鍵穴にささってはじめて植物の老化を促すのですが、その鍵穴が1-MCPで塞ぐことで老化ホルモンを感知しないとうしくみです。当時はぼさっとした学生だったのでこの画期的な発見にそれほど気が付かずにおりました。研究者には向いてなかったんですねえ。
今や、エチレンに感受性の高い花き(カーネーションほか)のみならず果物(リンゴやキウイフルーツ、マンゴーなど、国に依ります)などでも盛んに利用される化合物になりました。国産花きでは使われていないようです。
なお、1-MCPについての歴史的な経緯、化合物としての性質など、農林水産消費安全技術センターのHPに掲載されています。

海外産切花なら1-MCPが処理された商品をきっと手にしたことがあると思います。例えば台湾産オンシジウムの箱の側面を見てください。多くの出荷箱に「1-MCP pretreated」という記載があります。1-MCPで処理済みということです。

 

私たちも気づかないうちにこの化学物質に大変お世話になっているのですね。

花きの製品品質の維持に科学が大変役立っているという話をご紹介しました。

 

それではみなさま、ごきげんよう。

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