OPERATIONAL PERFORMANCE花研コーヒーブレイク

バラ生産は動物の暮らしを脅かす?ヨーロッパのニュースから

2022.03.01

こんにちは。泥油育子です。

今朝のNHK総合のニュース番組で、海外のニュースとしてでいくつか紹介された中の一つ。

そのニュースはアナウンサーの桑子さんの次の一言で始まりました。

「フランスのいけばな屋さん、

・・・生花店ですね」

生花をいけばなと読まれたのですね。んもう、桑子さんだから許しちゃう!といいつつそこはどうでもよくて、興味深いのはその内容です。

 

フランスの生花店ではそのバラの8割以上が輸入で、その多くは東アフリカのケニアから輸入されます。ケニアの気候は暑くもなく寒くもなくバラ生産に適していて、1年中出荷可能(もちろん日本もそうですよ。念のため)。ニュースに映っていた農園では1日5万本以上のバラが世界約60か国に出荷しています。※もちろん日本にも出荷されますが、海外のニューストピックスなのでそれ以上は特に言及していません。

つづき↓

ただ環境問題が深刻化していて、バラの生産では水を大量に汲み上げるために生き物の暮らしを脅かしているという内容でした。その時に使われた映像はカバやシカなどが(恐らくナイバシャ湖などの)水場にいる様子。何百もあるバラの圃場が動物の生態系を脅かしているという構図を短い間にわかりやすく伝えるものでした。

 

スタジオのアナウンサーさんは、

「このように報道されてしまうと、今後プロポーズをするときにバラの花束を上げるのも・・・う~んとなってしまうのでしょうか。・・・すみません!」

とおっしゃっていましたが、こういうネタにアドリブでコメントをいわないといけないアナウンサーのお立場もなかなか難しいのかもしれません。

 

どうしてこのようなニュースが持ち上がったのか、環境保護意識の強いヨーロッパらしいといえばらしいですし、日本は水資源が豊かで恵まれていますが、世界中多くの国では水資源の取り合いですから、何か花き生産をライバル視したところ(or花き生産からなにかに切り替えようとしている他産業)が、SDGsや環境の切り口からやり玉に挙げようとしたのか、そんなところまで邪推が働いてしまうくらいのトピックスに感じました。花の生産が生態系を脅かす、たくさんのバラを誰かにあげるのも環境破壊につながるとなると、んじゃあ世界の穀物どーすんのって。穀物の生産規模たるや、バラ生産とは比べ物にならないくらいですから、そのものさしでいったら「生態系を脅かしまくっています」的論調で報道されて然るべきでは?なんて妄想に取りつかれながら聞いていました。

小麦など穀物の生産、そしてもちろん畜産の飼料栽培もそうですが、結局は水利権の取り合いによるところが大きいですよね。それが生態系を脅かしているなんて話なら、いっそのこともうフランスパンやお肉食べないほうがいいんじゃない?ってことにつながるんじゃないかと。スタジオのアナウンサーさんは、そのことにもご理解が及びコメントに窮していたということもあるでしょうか。経済活動と環境保全を両立させるのはいつの時代も難しいことではありますが、もし環境破壊だと切り込むなら本質を語ってほしいなと。

一方で、世界全体を見渡せばバラとか花の生産が(部分的にしても)生態系に影響を与えているという論調は、いつも一定にあるものだということも受け入れていかないといけないのかもしれません。イノベーター理論のようなもので2.5%とかほんの僅かだとしても、どうしても考えを共有しかねることもあるのです。

 

これ以上書くと止まらなそうなので話題チェンジ★NHK-BSプレミアムの「ヒューマニエンス」という番組は人間の存在自体に迫る科学番組で、第1回から気に入って観ています。面白いのでできれば再放送でも観ているのですが、この前「“顔” ヒトをつなぐ心の窓」をテーマに再放送していました。この回は見逃してしまったな~と思いつつ興味深く見ていましたが、最後の方でJFMAの新春セミナーでお招きした認知行動学の渡邊 克巳先生がご登場されていました。JFMAのセミナーは毎回そうですが、この時も良い先生をお招きできたものです。次回のJFMAセミナーにもぜひご注目くださいませ。

 

それではみなさま、ごきげんよう。

 

・・・以下3月2日に追記・・・

上記のように独り言のようにうじゃうじゃと書きなぐっていましたら、いつもお世話になっている業界の某重鎮先生よりご指摘の上、ご指導いただきました。

日本の生産はさておき、ケニアの降水量はバラ生産に必要な潅水量に十分でないため、ナイバシャ湖などの水をたくさん使っていることには間違いないようです。水循環型モデルになっていないバラ栽培を見て、人間が「生き物の暮らしを脅かしている」と心配するのは決して言い過ぎではないといえます。

 

 

 

以下、重鎮先生からご教示いただきましたことです。

農業技術の計算上ですが、例えばハウスのバラの潅水は1平米あたり10mm、つまり平米あたり10リットルの水を必要とします。

週2回潅水するとして、仮に潅水年間100回とすると、1平米あたり1トンの水が必要になります。このほかに農薬散布の水、切り花の水あげの水などが必要です。

 

東京の場合、降水量は年間1,500mmですから、平米あたり1.5トン。

一方、ナイバシャ湖から100km弱のナイロビの年間降水量を見てみますと800mm-1000mmのようです。1トンくらいとすると、雨水だけではバラ生産は難しいことになります。そこで、周辺から集まった水が貯まる湖の水や地下水などを使っていることにことになるでしょう。動物たちのオアシスの水をバラ生産に使うとなると、一方でアンチの声も聞かれるということですね。

 

 

 

尚、乾燥植物の麦のかん水量は0なのだそうです。水はやらない。世界を見渡しても降水量の少ない地域で生産が盛んなのもうなづけます。

水稲は、常時平米300リットル、つまり0.3トンの水を貯めておかなければならないとのこと。

 

Dr.重鎮先生、ありがとうございました。

pagetop