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ウィンブルドンの芝を科学する?今年はなぜ転倒者が続出しているのか

2021.07.05

こんにちは。泥油育子です。

2年ぶりにテニスのウィンブルドン選手権が開催され、いよいよ大会2週目に入りました。昨年はコロナで開催中止となりましたが、中止は第二次大戦以降初めてのことなのだそうです。

ところが、女子シングルス優勝候補の一角でもあるセリーナ・ウィリアムズが1回戦で転倒して棄権、さらには1回戦でフェデラーと対戦したマナリノ(仏)も試合中に転倒して棄権することになってしまいました。前回大会覇者のジョコビッチも転倒していましたし、悪童として名高いキリオス(豪)も・・・1回戦での転倒者が続出しています。そのほかにも大けがに至らずとも、対戦しているA選手とB選手が立て続けに転倒している様子をよく見かけます。

 

今年の芝は何か違うのでしょうか。

私自身が実際にウィンブルドンの芝の上でプレーをしたわけではないのでわかりません。市民プレイヤーレベルでは実際の芝でプレーする機会はまずないので(人工芝はあっても)どのくらい滑るものなのかすらわかりません。転倒者が今年とりわけ多いかどうかも転倒者数が発表されているわけではないので、定量的なこともわかりません。だた、ビッグネームの選手が転んで棄権したとなると、どうしても話題が大きくなり、いつもより滑りやすいのかなと思ってしまいますね。

 

芝の王者と言われるフェデラーさまは試合後にこのようなコメントを言っています。

「コートの感触に大きな違いはなかったと思う。最初の2試合はとても難しいけど、いつもこんな感じ。最初の方の芝はより滑りやすくて柔らかい。大会が進むにつれて芝が堅くなり動きやすくなるんだ」

 

さて、その芝ですが、私が想像する以上にふかーく科学されているようです。(↓ナショジオの記事より)

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ウィンブルドン初期は、複数の在来の芝を組み合わせたもので、硬い土に芝を植え、馬に小さな芝刈り機を引かせて手入れを行っていたのだそうです。タンポポやキノコが時折顔を出すなんてこともあったのだとか。

1921年にコートが現在の場所に移転したとき、500キロ以上北にある海辺の町から芝生を持ち込んでいたようですが、大変すぎてグラウンドキーパーたちは自分たちで芝を栽培することにしたそうです。

その後、農業科学が急速に発展。世界中の研究者が「家畜にとって」より栄養価の高いものや害虫に強い品種、成長の早い品種、鮮やかな緑色の草、芝生や飼料に適した草をつくろうと競い合う中で品種改良が進みました。1951年に英国の「スポーツ・ターフ研究所」というところがウィンブルドンの芝生の開発を専門的に引き継ぎ、芝生のコートに科学の力を持ち込み、開発が加速。地面の硬さ(ボールがバウンドする高さに影響)を変えるための新しい土壌、より早く確実に育つ鮮やかな緑色の芝生をつくるための肥料をテスト。「リムジン」、「ビンゴ」、「ジュピター」、「バーリンド」など、微妙に異なる種を植え、踏みつけたりスライディングによる摩耗試験を繰り返し行い、研究は重ねられたのだそうです。

現在の芝生はペレニアルライグラス(ホソムギ)が100パーセント。葉は短く繊細で根もしっかり張るタイプで研究責任者は完璧に近いといいます。

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う~ん、完璧に近いことに間違はないでしょう。

ただ、ジョコビッチはウィンブルドンで優勝すると、芝をひとつまみとって口にしますが、さすがに味までは考慮されていないでしょうね・・・。

 

いずれにしてもウィンブルドンの芝はただの芝じゃない。科学の結晶なのだとナショジオの記事を読んで理解しました。

「一寸の虫にも五分の魂」

いや例えが違うかな。「神は細部に宿る」??

しかし、芝で転ぶのはなにか別の理由があって、神の仕業ではないようにも思います。品種よりも湿度との兼ね合いなのでしょうか。想像でしかありませんが。

 

さて、そのウィンブルドンですが本日がManic Monday(興奮の月曜日!)と呼ばれ16強が一度にすべて出揃う日です(シングルス4回戦を一気に行っちゃう“興奮の月曜日”なんです!)。グランドスラムの中で唯一ウィンブルドンだけ大会中日の日曜日に試合を行わないミドルサンデーがあるため、次の月曜日に試合が集中するのです。そもそも休日のミドルサンデーがあるのは、芝を休めて後半戦に備えるためなのだそうです。

 

ところが、そのManic Mondayも今年が最後ということになるそうです。というのもミドルサンデーがなくなるから。ミドルサンデーがなくなるのは、ここ数年で芝コートの保全技術が向上したからなのだそうです。芝の力と保全技術の革新、偉大なり。芝が大会に与える影響は大きいですな~!!

 

さて、ここからはおまけです。

Manic Mondayで勝ち残った、個人的に注目の選手がいます。チュニジア女子選手のジャバーです。

ジャバーは前哨戦のバーミンガムで優勝して話題を集めました。しかしそれは決して奇跡ではないことを今回のウィンブルドンですでに証明しています。3回戦で元ウィンブルドン優勝者のムグルサに打ち勝ち、4回戦の本日、2020年全仏オープン優勝者のイガ・シフィオンテクにも勝って、チュニジア人およびアラブ人女性としてウィンブルドンで初めての16強入りを果たしているのです。

これはテニス界のみならずスポーツ界全体にひとつの金字塔を打ち立てたといっていいのではないでしょうか。社会が変わってきた一つの象徴といえるかもしれません。テニスで活躍する選手を見ていると、テニス界もまた世界の縮図という一面があるんだなと思うことがよくあります。

 

それではみなさま、ごきげんよう。明日のジャバーとサバレンカの対戦を楽しみに拝見したいと思います。

 

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