OPERATIONAL PERFORMANCE花研コーヒーブレイク

なぜグリーンは人の身体に医学的効能があるのか

2016.11.01

10月20日の小欄で疲労と脳の関係について調べてみようかな~という独白を記しました。

それに関係しそうな本をタイトルで探して適当に読んでみましたら、調べたかったことはあまりよくわからなかったのですが、それ以外のことがわかり、プチ感動。よくあるパターンです。

「なぜ花やグリーンは人の身体に医学的効能を及ぼすのか」ということが書いてあったのです!

 

近年はグリーンや花が人の健康に対する医学的効能が証明されています。しかし、なぜそのような効能を持つのかがわかりませんでした。近いうちにそのポイントが議論される日が来るかもと社内で話していました。

「なぜか」という点について、ある医学博士のご講演に基づき私の中は一定の理解をしているつもりでした。「人類は700万年という歴史のうち99.9%以上を森の中で過ごしてきたから」と。人のDNAは変化するのに2-3万年かかる。しかし、人は都市生活を始めてから200年くらいしか経過していないので、都市生活に適応したDNAになっておらず、森の中にいたころのDNAのまま生活を送っている。だから、必然的に人は都市生活の中でストレスを感じ、グリーンを目にすると健康に対する医学的効能を得ることができる。

私にとっては説得力のあるものでした。

(一方で、では2-3万年経過して、人のDNAが都市生活にカンペキに適応できるようになれば、花やグリーンは必要とされなくなるのかという疑問も残ります。)

ここからは別の話が混じりますが、では、なぜ健康を害するリスクを冒してまでも都市生活をするようになったのかというのは、人の進化の過程でのミスマッチというものでしょう。

人は二足歩行をするようになりましたが、その代わりに腰痛という持病に悩まされるようになりました。女性は自身をより美しく見せるためにハイヒールを履くようになりましたが、それと引き換えに外反母趾や腰痛という人間独特の悩みが生まれました。人類の飢餓を救うために糖質や脂質の多い食物を量産できるよう開発されましたが、今度はそれらの過剰摂取によって引き起こされる病気によって悩まされる。

進化の過程でのトレードオフとも言えるかもしれません。

このように、多少の犠牲を払ってでもより豊かで快適で、便利な生活を求めるために都市生活を始めたのが人類です。

 

ここまでが前置き。(ナガ!)

その都市生活を始めた人類になぜグリーンが必要とされるのか、なぜ医学的な効能をもっているのかという点について、今回読んだ本に書いてあったことは以下の通り。

森や緑が人の健康に良い影響を与えるのは「ゆらぎ」であると説明しています。

脳に快適な状況を与えるのは森のマイナスイオン(そもそも医学的にはこの存在すら証明されていない)やフィトンチッドなどではなく、「ゆらぎ」であり、これが脳疲労を軽減することが解明されているのだそうです。

「ゆらぎ」とはなにか。

森を歩くと木漏れ日が輝き、そよ風が体をそっと撫でていく、川のせせらぎの音が聞こえ、不規則な鳥の鳴き声も響く。このような一定の平均値(規則的なもの)から微妙にずれた、ある程度の不規則な現象を「ゆらぎ」というのだそうです。(これが行き過ぎると「カオス」。なるほど)

では、なぜそのゆらぎが心地いいかというと、自然環境に存在する私たちの生体も常にゆらいでいるからと。自然環境のゆらぎと人体のゆらぎがシンクロするからこそ心地良いと感じるものなのだそうです。

人は直線の中だけでは生きていけないと聞いたことがあります。だから身の回りに花やグリーンを置きましょうと。根拠があるのかどうかわからないまま聞いていましたが、つまり、建築物などの規則的な直線に対し、花やグリーンそのものがゆらぎであるわけですね。

ではなぜ人は森の中に住んでいた方が健康でいられるのに、森から出て都市生活を始めたのか。これが、先述した「進化のミスマッチ」なのかもしれません。

脳波、心拍、呼吸、体温、血流、血圧、すべて刻々と変化し、人の身体はゆらぎながらコントロールされているため、ゆらぎの環境に身を置くと心地良さを感じ、疲労回復効果があると筆者は言っています。ゆらぎがある環境とない環境とでは、仕事の効率や疲れも違うという実験の結果も掲載されています。

都市はゆらぎをなくして(コントロールして)、便利さや豊かさを求めて直線の社会を作ったもの。

このお話からすれば、都市化が進めば進むほど、人が生理的にゆらぎを求めるようになるのはごく自然の動きと言えるでしょう。

昨今の観葉植物ブーム(ブームということが正しいかどうかはさておき)は都市化に伴う必然のムーブメント。ヒトの脳の欲求の結果、発生した現象のように思えてなりません。

ということは、もしDNAが変化して都市生活によりよく適応したとしても、私たちの身体はいつまでもゆらぎを求めて花やグリーンを必要とするということですね。人の身体が生体である限り。

body_man

参考文献:『すべての疲労は脳が原因』 著者:梶本修身氏(医学博士、大阪市立大学大学院拾う医学講座特任教授、東京疲労・睡眠クリニック院長)

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