花研コーヒーブレイク
学名の美学
2026.02.18
こんにちは。みんなの花研ひろばです。
少し気取ったタイトルをつけてみましたが、壮大なことを言うつもりもなく、今日はまたちょっと違う切り口で学名についてアプローチしてみたいと思います。あくまでも愛好家目線ですよ。
学名のなかには、ゴリラやウナギなど、属名と種小名が同じ学名があります。
以前、小欄でもご紹介したことがありますが、属名と種小名が同じで繰り返される例は以下の通り。
- 西ローランドゴリラ Gorilla gorilla gorilla(ゴリラ・ゴリラ・ゴリラ)
- ヨーロッパウナギ Anguilla anguilla(アンギラ・アンギラ)
- アメリカバイソン Bison bison(バイソン・バイソン)
- クマネズミ Rattus rattus(ラタス・ラタス)
- アカギツネ Vulpes vulpes(ウルペース・ウルペース)
このように、属名と種小名がまったく同じになる命名を「トートニム(tautonym)」といいます。
動物の世界では決して珍しいものではありませんが、ところが、植物にはこのトートニムが存在しないのだそうです。
なぜでしょうか。
生成AIちゃんに聞いてみたところ、植物の命名は「国際藻類・菌類・植物命名規約(ICN)」に従っており、そこでは属名と種小名が同一になる組み合わせは認められていないと明記されています。植物の学名は通常「属名+種形容語」で構成され、属名と種小名の重複は許可されていないのだとか。
う~ん、なんだかこのような説明だけでは納得がいかぬよ。植物の世界では禁止されているからない。つまり「ないからない」と、トートニムがない理由を聞いたらトートロジーで返された感じww
そこでさらに「なぜ禁止されているのか」を生成AIちゃんに聞きましたら、「混乱を防ぎ、情報の正確性を保つため」と。
う~ん、まだまだ納得がいかぬよ。
ではなぜ動物では許され、植物では許されないのかを聞いてみました。
回答抜粋⇓
- 歴史的な経緯: 植物学の世界では、昔から「種小名は属名とは異なる、その種の特徴を表す言葉であるべきだ」という考え方が強くありました。
- 規約の違い: 植物は「国際藻類・菌類・植物命名規約(ICN)」というルールに従っており、そこでは「属名と種小名が全く同じ組み合わせ(トートニム)は正当な名前として認めない」とはっきり明記されています。
- 動物は「一番代表的な種」を分かりやすくするために同じ名前にすることが多いですが、植物は「言葉としての区別」をより重視しているという文化の違いがあるのです。
植物の場合には属名とは異なる語を用いることで、より明確に区別し、記述性を持たせるという思想がある。一方、動物の命名規約では代表的な種を象徴的に示すという考え方が背景にあることもあり、トートニムが認められているということのようです。
なるほど、やっと得心が行くところまで到着。
植物は「区別」を重んじ、動物は「代表性」を許容する。単なる技術的なルールの違い以上に、学問文化の違いがあるのかもしれません。(さらにその学問文化の違いのにある背景についても思いを巡らせてしまいますが、推測の域を出ないので、今日はここまでにしておきます。)
いずれにしても、学名のルールというのはその学問分野の設計思想や美意識が反映されたもののようにも思えてきます。
この業界に入るまで「学名」なるものとは、ほぼ無縁で生きてきたような。あるいは、無縁ではないかったかもしれないけど、あまり意識していなかったように思います。
しかし、今の仕事では学名からのアプローチが欠かせません。その入り口に立っただけでも大変興味深く、その奥深さは小欄でもたまにご紹介している通りです。
そして、今回は学名の背景には単なるルールばかりではなく、美学や哲学のような側面もあることに気づかされました。
そういえば、トキの学名はNipponia nippon(ニッポニア・ニッポン)。
なんて美しい学名なのでしょう。この学名にも美学を感じます。

『フラワービジネスノート2026』の最後の方のメモページ最下部には豆知識が掲載されていて、そのいくつかは学名についてその由来や意味を紹介しています。
エキノプス、オドントグロッサム、プラティコドン、リコペルシカム、ルピナスなど。
・・・ぜひご笑覧ください。
それではみなさま、ごきげんよう。











