花研コーヒーブレイク
シンプルな価格が購買を後押しする~売り場の新視点
2025.08.27
こんにちは。みんなの花研ひろばです。
ユニクロフラワーさんの売り場をご覧になった方も多いでしょう。現在国内に22店舗を展開し(ユニクロさんのHPよりカウント、8月27日時点)、平日昼でも売り場はにぎわい、レジも常に動いています。時折「かわいい!」という声が聞こえてきて、花業界に携わる身として嬉しくなる光景です。
話題になって久しいユニクロフラワーさんの成功要因の一つとして、JFMA(日本フローラルマーケティング協会)会長小川先生(法政大学名誉教授)は、価格帯がシンプルであることを挙げています。「価格のシンプルさ」です。一般的な花売り場には198円、298円、348円、398円・・・と、およそどこでも10種類以上の価格帯が並びます。消費者は「どちらがお得か」「損はしたくない」と迷ううちに気持ちが冷めてしまうこともあります。購入決定までのプロセスが複雑すぎると、購買意欲を削いでしまうのです。
ユニクロフラワーさんは、この点を徹底的に整理しました。すべての商品が束でパックされ、衣料品と同じく色別に陳列。価格は「1束●円」「2束〇円」「3束◎円」「お得パック◎◎円」と、切花なら4種類程度。消費者は好きな花や色を選ぶだけでよく、複雑な値踏みは不要です。ユニクロフラワーの売り場を立ち上げた方も「1本400円のバラと600円のトルコギキョウ、どちらが高いのかわからない」という、ご自身の経験から、消費者を混乱に引き起こす価格の謎をクリアにしたかったと語っています。
消費者はもちろん花に詳しい人ばかりではありません。しかし私たちは、詳しくない人にももちろん花を楽しんでいただきたいと思っています。であれば、消費者にしてもらうのは、花の値踏みではなく、好き花を自由に選んでもらうことでしょう。価格をシンプルにすることで、好き花だけ選べばいいという購入までのプロセスも簡素化することができ、購買に繋がりやすくなるわけです。
この考え方は海外にも見られます。
こちらのフローラルデイリーの記事も価格設定の簡素化に言及しています。
この記事によれば、米国では品揃えに関しては数歩先を進んでいる。ブーケのサイズも大きめなせいか、価格帯もヨーロッパより30%割高。しかし、常に「3つの価格帯」に整理され、消費者の意思決定を早めていると分析されています。
そういえば、百円ショップも、成功の要因は「安さ」だけでなく「価格を比較する必要がないシンプルさ」にあるとも言えます。
あるいはサブスクという購入チャネルが伸びるのは毎月定額で、サービス内容によって価格が変動しないことも理由の一つでしょう。花の場合も、品目が変わるからと言って支払金額が変わるのでは、生活者の支持は得にくいかもしれません。
生花の小売現場においてせっかく魅力的な売り場を作っても、複雑な価格設定で消費者が迷い、結局気持ちが購入から離脱してしまうのはもったいないことのように思います。もちろん全ての売り場に当てはまるわけではありませんが、「価格の簡素化」は購買を後押しする有力なキーワードになりそうです。
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それではみなさま、ごきげんよう。