花研コーヒーブレイク
「いつの間に?」進化する日常と花き市場のDX
2025.07.03
こんにちは。ゲストブロガーのプラティコドンです。
天気の良い日が続いていたので、先日出かけようと久しぶりにレンタカーを利用したところ、予約から利用手続きまでの大部分がスマートフォンのアプリ内で完結できるようになっていました。受付の際に紙の申請書を書くこともなく、支払いも事前に済ませていたため、当日は免許証を提示するだけで鍵を受け取れました。その手続きのスムーズさに、ほんの数年のうちに「こんなに変わったのか」と少し感動しました。
こうした“いつの間にか便利になっていた”体験は、身の回りにどんどん増えているように思います。例えば、おくすり手帳やライブチケットもアプリになっていますし、新聞や漫画もすっかり電子版が普及しています。ユニクロで買い物をすれば、レシートは専用アプから電子で受け取ることができます。気づけば「紙」に触れることはほとんどなくなりました。
こうした変化の背景にあるのが、「DX(デジタルトランスフォーメーション)」です。最近では企業活動の中でもよく使われるようになってきた言葉ですが、意味するところはただのペーパーレス化ではありません。業務の効率化、サービス品質の向上(ミスが減る、人を待たせないなど)、人手をかけなくても処理できる仕組みの構築(省人化、省力化)、など、より本質的な“業務の変革”を目指す取り組みです。
では、私たち大田花きはどうでしょうか。
たとえば、市場における「入荷情報」の作成業務。これは生産者から送られてくる「送り状」に記載された情報を基に、市場で品目や数量を登録する業務です。かつては紙で受け取った送り状を一つ一つ見ながら手入力していましたが、近年では徐々にデジタル化が進み、データ送信によって業務の簡易化が図られました。出荷量の多い産地さんを中心に、共選のシステムを用いてデータ送信していただいたり、個選共選問わずExcel形式でデータを送信していただくなど、様々な方法で入荷情報を作成できるようになりました。
その結果、2024年度は全体の出荷のうち63.4%がデジタルデータによる入荷作成となりました。6割を超えれば、すでに送り状のデジタル化が過半数から多数派となり、“主流の手段”となったといっていいでしょう。ちなみに2010年度は31.6%、2015年度は42.9%、2020年度は50.0%だったので、この10数年で2倍以上に伸びたことになります。生産者様のご協力とお取り組みの積み重ねが、着実に成果へと結びついています。
とはいえ、すべてが一筋縄ではいきません。
例えば、複数の品種を1ケースにまとめた「MIX商品」の場合は、データでの詳細管理が難しく、結局はMIXに含まれる品種や色などの中身を、人の手で入力しなければなりません。また、データ送信された入荷情報の中でも、いくつかはシステム上うまく変換できず、人の目でチェックすることが求められます。
さらに、生産者様によってはデジタル化にハードルを感じる方もいらっしゃいます。「高齢でパソコン操作に自信がない」「紙の方が作業が早い」等の理由ですぐに対応するのが困難な場合もあるのです。
データ化は確実に進んではいるものの、すべてを一度に変えるのは容易なことではありません。
それでも日々の業務の中で「入力の時間が短くなった」「他の業務に時間が割けるようになった」といった実感が少しずつ積み重なっています。こうした小さな変化の積み重ねが日常を少しずつ変えていき、気がついた時には「便利になっていた」と感じるようになるのだと思います。
みなさまの周りでも、気がつかないうちにDXが始まっているかもしれません。 “あれ、いつの間に?”と思うような変化を、ぜひ探してみてください。
それではみなさま、ごきげんよう。