花研コーヒーブレイク
「植物は何かを見ているのか」について~植物の未解決な謎~
2026.09.28
こんにちは。花研の一研究員です。
9月もそろそろ終わりではありますが、9月といえばなんとなくイグ・ノーベル賞が気になります。毎年日本の研究者があっと驚くテーマを解明し受賞していますね。イグノーベル賞、実用的ですし、驚きもあり、素晴らしい賞だなって思います。
報道ではその年の受賞のほんの一部の日本人の研究だけが取り上げられておりますが、イグノーベル賞のサイトを覗くと、過去の研究がずらりと並んでいます。植物関係の受賞がないだろうかと思い、ページをスクロールしているうちに、思わず二度見するような論文に行き当たりました。
「実物の植物が人工プラスチック植物の葉を模倣した」というのです。いやいや、そんな馬鹿な。

植物が隣の植物から影響を受ける話なら揮発性の化学物質の放出などから説明できそうです。しかし相手はプラスチックの植物です。
目でもあるのかというのが印象です。イグノーベル賞のサイトはこちら、受賞した論文もこちらです。
研究対象は南米チリの森林に生育するつる植物ボキラ・トリフォリオラタ(Boquila trifoliolata)です。この植物は以前から周囲の木の葉に似せて葉の形を変えることで知られていたそうです。葉の大きさ、形、色、ときには葉脈までも似てくるといわれていました
。
ところが2022年の研究では、研究者たちは人工のプラスチック植物を設置し、その近くで育ったボキラの葉を調べました。
するとプラスチックの葉に似た特徴を示したというのです。研究者たちは植物が何らかの視覚的な情報を利用している可能性まで議論・・・、おいおいです。
植物に目があるのでしょうか。もちろん動物のような目ではないでしょう。しかし私たちがまだ知らない形で「見る」能力を持っているのかもしれません。
そういう研究が2024年のイグノーベル賞において評価されました。
ところがこの受賞には続きがあるのです。植物が見る能力なんて・・・懐疑的な層もいるわけです。
2026年、別の研究チームがこの現象を再現しようとしました。植物は同じボキラ。マネされる相手を本物の植物・人工のオリーブ・人工のアイビーとしました。
すると、結果としては葉の形は確かに変化したそうです。
しかし、その変化した形が相手の植物に対応しているようには見えなかったという論文を出しました。
引用もとはこちら、まだ論文は査読を終えていないので、サマリーだけを読むことができます。こちらです。
違うんじゃないのーと指摘した論文が審査を終えてないって非常にビミョーなところですね。どちらかに軍配があがるまでの道のりは遠そうですし、それが科学って気がします。研究者たちは、「これまで擬態と考えられていた現象は、もともとボキラが持っている大きな葉形変異だった可能性がある」と指摘しています。
そうなると、植物が見ていたのではないかというロマンあふれる仮説は後退しますが代わりに現れた「なぜボキラの葉はこんなに自由自在に形を変えられるのか」という新しい疑問です。科学の面白さは、答えにたどり着くことよりも答えが次の謎を呼ぶところにあるのでは。
こちらの実験で使われたボキラは、英名でカメレオンバイン(カメレオンのようなツル植物)っていう名前で欧米では流通あるようです。日本では一般的な流通はまだのようです。実物にいつかお目見えしたいものです。
なーんだか自分で育ててみたくなる、ストーリーのある植物でした。
それではみなさま、ごきげんよう。
ボキラがフラワービジネスノートの「流通早見表」に載る日を夢見て。











