花研コーヒーブレイク
夏の風物詩 「ホオズキ」
2025.07.09
こんにちは。ゲストブロガーのアスクレピアスです。
贈り物や風物詩を通して、人と人とのつながりや季節の移ろいを感じます。
お中元もそのひとつで、矢野経済研究所の推移を見ると市場規模は年々減少傾向にあるものの、2025年の予測は5,800億円となっています。まだまだ大きなイベントであることは間違いありません。
お中元は中国の風習が日本のお盆と結びついて生まれた行事で、無事を確かめ合いながら贈り物を交わす習慣として定着しました。ギフト市場では「お中元」とあわせて「夏ギフト」という言葉を取り入れている企業も増えており、贈り物を選びやすくなりました。贈り物の文化も、時代に合わせてかたちを変えながら現代に受け継がれているように感じます。
もちろんお中元用に花の商品も提案されています。ブーケ、アレンジメント、鉢植えなど、さまざまな商品が販売されています。ブーケやアレンジメントでは、ヒマワリやトルコギキョウなど、見た目にも涼しげで華やかな花が定番として扱われている印象があります。
鉢植えでは、アサガオ、ブーゲンビリア、ハイビスカスなど、夏らしさを感じさせる花が多く取り扱われており、季節感を演出するのにぴったりです。
夏らしい花々の中でも、ひときわ印象に残ったのがホオズキです。季節感と和の趣を感じます。
ホオズキの歴史は古く、『古事記』に「あかかがち」という表現で登場します。古くは、大蛇の赤い目に見立てて「あかかがち」と呼ばれていたそうです。
現在の呼び方であるホオズキの由来は諸説あります。“口に含んで鳴らす仕草の「頬突き」”、“ホホ(カメムシ)という虫が付着しやすいため”、“赤い果実を「火付き(ほつき)」と称した”などといわれています。
『古事記』以外にも、歴史書や古典文学の中で、ホオズキは比喩としてたびたび用いられてきたようです。たとえば、『日本書紀』では猿田彦大神の赤く照り輝く眼に喩えられていますし、『源氏物語』では女性の豊かな頬に見立てられています。歴史を感じ、敬意が一気に高まります。
ちなみに『枕草子』では、ホオズキが「大きにてよきもの」のひとつとして挙げられています。つまり「大きければ大きいほどよい」ということです。もし、清少納言が現代流通しているホオズキを見たら、どのような感想が出てくるのか聞いてみたいものです。
こちらが大産地大分県から出荷される大分県のスタンダードなサイズ。測ってみると、全長で8-9cm、風船の胴回りが22cmほどあり、手のひらを埋め尽くしてしまう大きさです。その存在感にあらためて驚かされました。
ホオズキには、夏の季語「青鬼灯」と、秋の季語「鬼灯」があるように、本来、秋にかけて赤く色づいていくものです。現在では、お盆に合わせて赤く色づくよう、生産者の方々が調整を施し、出荷されています。7月から8月にかけて出荷が最も盛んな時期です。お盆に飾って夏の風物詩を楽しんでいただけると幸いです。
[参考文献]
『古典文学植物誌』學燈社、国文学編集部
それではみなさま、ごきげんよう。