花研コーヒーブレイク
アナログを忘れない
2025.06.02
こんにちは。みんなの花研ひろばです。
今日のできごと。
大田市場花き部の北側施設から本棟に戻ってくるとき、大田市場ではなかなか見ないシルバーの小型普通乗用車が路上に駐車されているのを見かけた。
住宅街を走っているような普通の乗用車だが、何十年も毎日毎日大田市場に通っていると不思議とわかるもの。トラックでもなければ仲買人さんが使いそうな車でもない。タクシーでもなく、ナンバープレートを見るとレンタカーでもない。市場関係者の車ではないことは直感的にわかった。
珍しいケースだが、だれかのお迎えかなくらいに思って背中越し視線を送っていると、車からアタクシの父親そっくりの小柄な男性が飛び出してきたのだ。
「すみません!すみません!!」
そっくりだが、父親ではなかった。
周りにはアタクシしかいない。
何か困っている感じがしたので、歩みを止めご用を伺ってみると、
「旗の台はこの辺ですか?」
わー、だいぶ違う・・・
とは言いませんが、車でも20-30分はかかりまっせ、旦那・・・というようなことを、できるだけ適切な言葉遣いで伝達。
「その信号を左でいいの?」
右です。右に出て環七を・・・
「右?環七?」
ですよね。わかりませんよね。
「私ね、千葉からきて旗の台駅にいきたいのですが」
入場してくるトラックに轢かれそうなるので、歩道の上に旦那さんを誘導。
「え、全然違うの?どう行けばいい?」
えーっと、とスマホで調べているときに、ちょうどいつも大森花卉さんのレジに立っていらっしゃる俳優さん(ぽい人)が通りがかり、声をかけてくれる。
旦那さん「旗の台の病院に行きたいんだけど」
なるほど、昭和医大ですねと俳優さんと口をそろえて言ったところ、
「え、病院の名前なんだっけ?」
と、秒で踵を返して、車の方にすっ飛んでいく。お年の割に、えらく機敏だ。
いや、飛び出さないでくれ~旦那さん。ほんと危ないんですよ、大田市場の周りは。
案の定、バイクが右方向から結構なスピードで走ってくるが、左右も確認せずに飛び出す旦那さんをうまく回避してくれた。
「昭和医科大学病院だった」
ですよね。
わかっているから飛び出さないで(と祈る)。
「どうに行くの?」
えっと・・・その信号を右、大きい通りに出たら左。
「その信号を左?」
じゃなくて右。
「あ、みぎィ!?」
右です。なんとなく旦那さんに地図のイメージがあって、そのイメージで来たからこんなところに迷い込んでしまったのだろうと想像。
カーナビもなくスマホもなく、慌てて地図を持たずに、どうにかなるとおうちを飛び出していらしたのかもしれない。
大きな通りが環七で、左にずっと行くと南千束(みなみせんぞく)という信号があるから、それを右に・・・と説明していると、大森花卉の俳優さんが、
「(旦那さん、)紙か何かあります?わたし、地図書きますよ」
と、既に右手にボールペンを持っている。マジシャンのごとく、音もなく用意されていた。
旦那さんは両手でズボンのポケットを抑えるが、紙らしきものはナシ。
ところが、アタクシが奇跡的に小さなメモパッドを持っていた。最近の雨でちょっと湿気ていたけど、ないよりマシなレベルのクオリティで俳優さんに差し出すと、
「あとは私が説明しておきます」と風のごとく旦那さんと車の方に立ち去っていった。
なんて親切な俳優さんなんだ。
アタクシはうまく説明できなくて困っていた。そこを柔軟なアイデアと優しさで速やかに解決された。
アタクシが持ち歩いているミニバッグの中には、メモパッドとボールペンがあった。アナログ道具を持っていながら、それを使う方法をすっかり忘れていた。昔はみな、紙とペンで地図を書いて説明していたのに。小型普通乗用車も、降りてきた小型の旦那さんも歯並び以外は父親にそっくりすぎて、少し動揺していたのかもしれない。
折しも、今日の日経新聞の一面は「AIは人類が生む最後の大発明」との記事。世界ではAIの開発が急速に加速している一方で、デジタル機器がなければどうすればいいのか、一気に思考停止になる自分を反省した。アナログ手法も忘れてはならないと旦那さんに教えられた気がした。
俳優さん、ありがとうございました。
旦那さん、お気をつけて。いまごろは無事に昭和医大病院にたどり着いているといいのですが。患者さんのご無事も心から祈ります。
それではみなさま、ごきげんよう。