「香りの提案」大田花き花の生活研究所

※本ページの情報は 2006 年時点のものです。花きの香りについては文化的情報としてみなさまにご参照いただきたく、ここに調査結果をご紹介いたしますが、弊社では香りの調査事業は終了いたしました。本内容のお問い合わせにつきましては、対応いたしかねます旨、予めご了承くださいませ。

センティッドゼラニウム

Category: ハーブ類

センティッドゼラニウムについて

ゼラニウムは約280種もあるペラルゴニウム属の植物です。ペラルゴニウム属の中でも、茎と葉に良い香りを持ち、香料用にも栽培されるゼラニウムを総称して「センティッドゼラニウム」と呼びます。品種交配が盛んに行われ、現在ではローズゼラニウム、チョコミントゼラニウム、レモンゼラニウム、シナモンゼラニウム、ヘーゼルナッツゼラニウムなどユニークな名前と香りを持った品種が数多く登場しています。
香りが良く、また品種によってバリエーション豊富な葉を持つことから、市場ではブーケやアレンジメントに使う葉物としての需要を徐々に伸ばしています。

ゼラニウムの香りとは
切葉としての流通量が最も多い「ローズゼラニウム」は、その名の通りバラ特有のコクのある甘い香りに柑橘系の爽やかな香りが特徴です。
茎や葉から放散する香りの主成分「ゲラニオール」は、バラやシャクヤクなどの花にも含まれている甘い香りで、葉の表面をこすったり刺激を与えると良く香ります。
㈱大田花き花の生活研究所において代表的な市場流通品種を成分分析した結果、ゼラニウムの豊富な香り成分が明らかになりました。

ゼラニウム品種と香りの特徴

”ローズゼラニウム”
バラの香りが強く、葉の使いやすさもあり、切り葉としての需要が高い品種。深い切れ込みのある葉が特徴。バラの香りの「シトロネロール」、イランイランなどの花に含まれる「ゲルマクレンD」、パチュリの香りに含まれる「グアイエン」などを含む甘くハーバルな香り。

”スケルトンローズ”
スケルトン(骸骨)というように細く繊細な葉が特徴。ミントの香りの「イソメントン」、バラ様の香りの「シトロネロール」などを多く含む、スッキリと甘い香り。

”スイートミモザ”
大きく丸みのある葉が特徴。ミントの香りの「メントン」「イソメントン」をはじめ、イランイランの花の香りに含まれる「ゲルマクレンD」などを含む、ハーバルでスパイシーな香り。

”ペパーミントゼラニウム”
ベルベットのような感触の葉が個性的。香り成分の大半にミントの香りの「メントン」「イソメントン」を含み、その名の通りの爽やかな香りが特徴。

”レモンゼラニウム”
細かいフリンジの入った小さな葉が特徴で、少し触っただけで強いレモンの香りがする。レモンの香りの「ゲラニアール」、フローラルな香りの「ネロリドール」などを含む。

”グレープフルーツゼラニウム”
葉の中心に茶色の斑があり、大きく5つに切れ込みが入った葉が特徴。バラの香りの「ゲラニオール」、レモンの香りの「ゲラニアール」、パチュリの香りに含まれる「グアイエン」などを含む。

”クロリンダ”
丸い縁取りの葉が特徴で、リンゴ、ミント、バラ、シダー、カンファーの香りが感じられる。ユーカリの香りに含まれる「アロマデンドレン」、パチュリの香りに含まれる「グアイエン」イランイランやクローブなどの精油に多く含まれる「カリオフィレン」などを含む。

”ミセスキングスリー”
葉は丸葉で、細かくフリンジがきいており、3つに切れる。パチュリの香りに含まれる「グアイエン」、イランイランの花に含まれる「ゲルマクレンD」、バラの甘い香りがする「ネロール」などを含むハーバルな香りが特徴。

”レディプレマウス”
ローズゼラニウムの斑入り。クリームっぽい白の線が入り、シルバーがかった色の葉で、深く切れ込みがあるのが特徴。バラの香りの「シトロネロール」にミントの香りの「イソメントン」などを含む、バラと柑橘の爽やかな香り。

”チョコレートペパーミントゼラニウム”
中心に茶色い斑が入る葉が特徴。ミントの香りの「メントン」「イソメントン」や、レモンやオレンジなど柑橘類の香りを特徴付ける「リモネン」を含む。

”スノーフレーク”
白い霜降りのような斑が入った丸葉が特徴。
パチュリの香りに含まれる「グアイエン」、フレッシュなバラの香りの「シトロネロール」、ランイランやクローブなどの精油に多く含まれる「カリオフィレン」を多く含む。

ゼラニウムの香りの活用法
アロマテラピーにおいては、ローズゼラニウムから採集された精油が多用されます。
葉と茎から採る精油はバラの香りを放ち、その香り成分には不安定な気持ちを鎮めて気分を高揚させる効果が期待出来るとされています。ホルモンバランスの変化から来る心と体の不調を整えてくれることから女性に優しい機能性ハーブとして芳香療法の現場でも多用されているようです。実際に弊社で行った成分分析においても「ゲルマクレンD」など、人への機能性が明らかになっている成分が含まれていたことから、ローズゼラニウムの葉の香りを嗅ぐことで鎮静やリラックス効果が期待出来ると考えられます。

バラ

Category: 草花類

バラの香りとは

もしバラの花に香りがなかったとしたら、私たちは長い歴史をバラとともに歩み、これほどバラの花を愛でることができたでしょうか。「香りのないバラは笑わぬ美人に同じ」とも言われるように、バラの花は姿かたちよりもその香りゆえに美や愛の象徴として、あるいは「花の女王」、そして「香りの女王」と呼ばれるようになったと思われます。バラの香りは近年の研究により、人の生理、心理に良い影響をもたらすことが分かってきました。その香りは成分研究されて7タイプに分類されています。

バラの香りのタイプ分類

バラの香りは、その香り成分の配合バランスによって7タイプに分類されます。

※香りの強さは3段階で評価しています。

1、ダマスク・クラシックの香り : 表記(DC)

バラの古典的な香り。強い甘さのある華やかな香りの中に、みずみずしさを感じさせる奥深い香りが特徴。香料はバラの香水にも用いられる。

2、ダマスク・モダンの香り : 表記(DM)

ダマスク・クラシックの香りを受け継いだ洗練された香り。バラらしいコクと深みのある甘さが感じられる。

3、ティーの香り : 表記(T)

現代バラの多くが持っている香りでソフトで上品な紅茶の葉に似た香りがする。香りの強さは中程度だが
リラックス(鎮静)効果をもたらすティーローズエレメントを多く含み、香りによる効果はもっとも高い。

4、フルーティの香り : 表記(F)

ピーチやアプリコット、アップルなどの新鮮な果実の香りを思わせる、さわやかな甘さのある香り。フルーティの香りは主に鎮静・安眠効果が期待出来る。

5、ブルーの香り : 表記(B)

ブルーの花色が特徴の「青バラ」系の品種が持つ特有の香り。主にダマスクモダンとティーの香りをミックスしたようなシャープな香りを放つのが特徴。ブルーの香りには鎮静効果や集中力アップ効果が期待出来る。

6、ミルラの香り : 表記(M)

イングリッシュローズに多く見られる特徴的な香り。スパイスの八角(アニス)に似た甘さとほろ苦さを感じる、まろやかな香りが特徴。近年の研究では、ミルラの香りには気分を高める覚醒効果が期待出来ることも分かっている。

7、スパイシーの香り : 表記(S)

スパイスの丁子(クローブ)に似た香りが強く、やや刺激的な中に甘さが感じられるほのかな香り。チャイナ系のバラや、日本に自生するバラ科のハマナシなどに見られる特徴的な香りでもある。現在の切バラ品種にはほとんど見られない。

上記の品種詳細は、花情報提供サービス「ここほれわんわん」からご覧いただけます。

バラの香りの活用法

香りの成分研究から、バラに含まれるティーローズエレメント(化合物名ジメトキシメチルベンゼン)という成分には、森林浴の香りと同様の鎮静効果や抗ストレス効果があることが実証されています。

1、鎮静効果、安眠効果
ティーローズエレメントにはラベンダー精油の3~4倍もの鎮静効果がある。ティーの香りのバラは特に鎮静効果が高い。

2、ストレスの低減
バラの香りをかぐと、血中のストレス値※コルチゾールの濃度が低減する。※コルチゾール濃度が高まると血圧、血糖値の上昇やストレス状態、うつ病の原因にもなるといわれている。

3、美肌効果(スキンケア効果)
バラの香りをかぐと、皮膚バリアの回復を早める効果がある。ダマスクモダンの香りのバラは特にスキンケア効果が高い。

バラの香りの変遷

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あとがき

海外からの輸入花きが増えている今日、日本国内はバラのシェアが約77%あり、ほとんどのバラを自国でまかない消費する、世界的に見ても大変恵まれた環境にあるといえます。国産バラの特徴は、品種の多さとスプレーバラのシェアの高さ、国際需給率の高さから鮮度の良いものが多く、よって香るバラが楽しめることにあります。また、日本のバラの育種家によって毎年多くの新しい品種が生み出されていることも大きな特色です。これからは国産バラの姿かたちだけではなく、香りにも注目してみませんか?