「香りの提案」大田花き花の生活研究所

※本ページの情報は 2006 年時点のものです。花きの香りについては文化的情報としてみなさまにご参照いただきたく、ここに調査結果をご紹介いたしますが、弊社では香りの調査事業は終了いたしました。本内容のお問い合わせにつきましては、対応いたしかねます旨、予めご了承くださいませ。

ユリ

Category: 球根類

ユリの香りとは

表① 資料提供 : 香り技術顧問 蓬田勝之氏

弊社では、切花として市場流通のあるユリ品種を以下のように分類し芳香調査を行いました。

①アジアンティックHB

日本、中国、朝鮮半島、シベリアなどを原産とするユリ(エゾスカシユリ、ヒメユリ、スカシユリ、マツバユリ、イトハユリ、オニユリなど)との交配により生まれた品種群。

【調査対象】

市場流通品種14品種。いずれも微香で、やや水っぽさや、生ぐささを感じる香りが多く見られる傾向にある。

【考察】

微香だがティー様の香りが特徴的な、市場流通品種「トロント(A)」の花香を分析した結果、花香調の香りの「リナロール」、スズランの香りなどに含まれる「ターピネオール」がごく微量に検出された。微量のため花香としては強く感じられないようである。その他の市場流通品種の大半は香りが無い、または微香の品種であった。また、ヒメユリにはアミン臭と呼ばれる臭いがあり芳香性が低いことからも、アジアンティックHB全体の芳香性はあまり期待出来ないと考えられます。

※冒頭の表①にもとづいて、調査対象から検出された特徴的な香り成分をタイプ分類し、下記グラフに表しました。実際の香りの強さや印象は、香り成分の量・構成比によって大きく変わるため下記グラフはあくまでも香りの全体のイメージとしてご参考ください。

②オリエンタルHB

主に日本原産のユリ(ヤマユリ、サクユリ、ウケユリ、オトメユリ、カノコユリ、シマカノコユリ、ササユリなど)との交配により生まれた品種群。

【調査対象】

日本に自生する原種7種および、市場流通品種108品種。

【考察】

現在のオリエンタルユリにおいて、ヤマユリやサクユリなどを親に持つHB品種は、フローラルスパイシーな強香にクセのある生臭さ(フェノリック)な香りが特徴となっていますが、オトメユリやカノコユリ、ササユリなどは、ヤマユリと全く異なる香りを持っており芳香性が高いことが分かりました。

市場流通があり、かつ芳香性が期待出来る品種としては、オトメユリ、カノコユリ、ササユリなど原種の他に、オリンタルHB×トランペットHBとの交配種であるOTユリ「ニンフ」や、近年の育種品種であるオトメユリ×カノコユリの交配種「スイートメモリー」などが挙げられます。

③ロンギフロールムHB

日本、中国、台湾などを原産とするユリ(テッポウユリ、ハカタユリ、タカサゴユリなど)との交配により生まれた品種群。

【調査対象】

日本に自生する原種3種および、市場流通品種10品種。

【考察】

現在のテッポウユリの交配親として使われた、原種「タカサゴユリ」と、現在のテッポウユリ品種を分析した結果、香りはイランイラン様のコクのあるパウダリーなフローラルノートが特徴となっていることが分かりました。ロンギフロールムHBの香りはオリエンタルHBに比べると弱い傾向にあるようですが、オリエンタルHB特有のクセのある香りを持たないため芳香ユリとしての扱いやすさは利点ではないでしょうか。

④トランペットHB ※切花の市場流通はないが、芳香性の高い品種を含む系統

リーガルリリーなどの中国原産のユリを中心にして作り出された品種。オリエンタルユリ特有の生臭さを持たず、芳香性が高い傾向にあります。これらは現在のOTユリ品種の親として用いられており、香りの良いOTユリ「ニンフ」は、芳香性が高いトランペットHBの特徴を受け継いだ品種と推測されます。

⑤カンディデュムHB ※切花の市場流通はないが、芳香性の高い品種を含む系統

マドンナリリーなど、ヨーロッパに自生するユリ(マルタゴンリリーを除く)から生まれた品種群。

マドンナリリーの香りはフローラル、ヒヤシンス様の香りを基調にジャスミンやイランイランの特徴を持ち、その芳香性の高さがうかがえます。