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病院の花について

2014.11.29

 

お見舞いの生花を禁止する病院があることが各メディアなどで取り上げられ、波紋を呼んでいます。

昨晩もソファーに腰かけ、ボケーと空(くう)を見つめていましたら、たまたまONになっていたTVでそのことを話題にしている番組が流れていました。弊社でも東京都内の病院へのヒアリング調査をお手伝いさせていただきましたが、全国でどのくらいの病院が禁止しているのかという新聞記事もTV画面に大きく出ていました。

そのテレビ番組では決して生花の持ちこみの良し悪しを主張するものではありませんでしたが、視聴者に“「実は!」病院に生花は禁止しているところが多いの、知ってる?”というちょっと驚きな印象を与える演出だったような気がします。(あくまでも個人的な印象です)

私どもの調査では、関東圏の病院で生花を禁止しているところはおよそ1割くらいです。そのほか患者さんの症状やそれぞれの状況にもよるため、都度問い合わせてくださいというところも3割ほどありました。(関西ではもう少し禁止している病院の割合が多いようです)

 

なぜ病院が生花を禁止するのかというと、花瓶の水の中に発生する緑膿菌が院内感染の原因になるリスクを回避するためです。緑膿菌はキッチンやお風呂場など、水気のあるところでは私たちの身の回りでも当たり前のようにいるものです。水周りを中心に、例えばシャンプーやリンスを別の容器に入れ替えて、その容器を長い間使っている場合は、そのようなところにも多く生存するといいます(目視したことはありませんが)。この緑膿菌は通常の健康な人に感染することはまずありません。しかし、入院中で抵抗力の弱まった人や感染症に注意する必要のある人たちにとっては、リスクになる可能性のある菌なのだそうです。

 

さて、病院では生花の持ち込みを禁止する必要があるほど、花瓶の水は患者さんたちにとってリスクなのでしょうか。

感染症の専門家である神戸大学医学部感染症内科教授・岩田健太郎先生は、週刊新潮のコラムで「感染症を引き起こすからという理由で病院で生花を禁止するのは良い対応とは言えない」との見解を示しています。

細菌がそこにいることと、感染症を引き起こすこととはイコールではない、感染症を引き起こすには、経路が必要。花瓶から緑膿菌がぴょんと飛び出てくるわけではないので、患者さんが花瓶の水を直接触ったりしないように配慮をするだけで十分なのだと。

それより、緑膿菌感染の最大のリスクは、尿道に通すカテーテルの留置なのだそうで、感染ルートが明らかになっていない生花を禁止することよりも先にすることがあるでしょうと提言されています。

そして患者さんが花から得る安らぎはほかの何物にも代え難く、患者(ペイシェント)に花を我慢するよう忍耐(ペイシェントであること)を強要するのは得策ではない。病院は禁止するばかりではなく、他人に迷惑のかからない範囲でもっと許容を広げるべきで、それができれば日本の医療はもっと良くなるとおっしゃっています。(週刊新潮 ’14.10.23)

 

私たちは専門知識がないために、問題を針小棒大に捉えてしまったり、メディアで報道された事象の一部がまるですべてであるかのように錯覚してしまったりすることがあります。知り得た情報の中で判断するしかない私たちにとっては、やむを得ないことともいえるでしょう。

是非ここは、専門家の意見に耳を傾け、病院に生花を持ちこむことの是非について、冷静に見つめてみたいと思います。

 

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